ブックライブ書店員
繁殖犬。それは繁殖業者(ブリーダー)のもとでペットショップや個人に販売するための仔犬を産ませるための親犬を指します。
産んでも我が子を育てることはできず、ただ産むだけの存在として扱われることも多いのが現状です。
近年、悪質なブリーダーに関するニュースが後を絶ちません。
本作は、悪質なブリーダーのもとで生まれたチワワの女の子が、自身も悪質なブリーダーの繁殖犬としてお母さんと同じ姿になり、
初めてお母さんの苦しみを知ります。
最後に女の子が「華」というはじめての、「本当の名前」をもらうまでの壮絶な、そして過酷な物語を、
静かに向き合って読んでいただければと思います。
作中、かなりショッキングな描写がありますが、これが日本のペット業界の姿の一部です。
もちろん良心的なブリーダーもたくさんいますが、反面、悪質なブリーダーや保護ビジネスが後を絶たないのも事実です。
擬人化しているからだけでなく、華ちゃんの表情をありのまま受け取ることで悲しさや苦しみが伝わってきます。
私は本作を読んでは苦しくなり、何度も読み続けることができなくなりました。
手を止めてはまた読んで、苦しくなっては手を止めてを繰り返し、泣きながら読み切りました。
ペットショップに並んでいる子、ペットショップに並ぶことすらできなかった子、ペットショップに子を並べる為だけに強制的に産ませられる母犬。
華ちゃんをにんげんに置き換えて読むとどうなるでしょうか。
私たちが住む日本のペット業界がどれだけの犠牲の上に成り立っているのか、事実から目を背けずしっかりと知る必要があると感じます。
作者もあとがきで伝えていますが、単純に「かわいそう」「泣ける」ではなく、何かの行動を取るきっかけとしていただればと思います。