2015年初版の青年漫画のバトルアクション作品の本作。
手にしたきっかけは、劇団四季の舞台が、あまりにも良かったから。
種々の設定があるのだけれど、主軸を実在したフローレンス・ナイチンゲール(フロー)と、今もあるイギリスのドルーリー
・レーン王立劇場の伝説となっている幽霊、灰色の服の男(グレイ)、という異質な2人のラブロマンスと見ると、俄然面白くなってくる。
片や、一生独身で過ごしたクリミアの天使と呼ばれた聖人。だが、本作では裕福な家庭に生まれながら天啓を受け、人助けを生涯の使命と信じているのに、家族に理解されないしがらみから、自分の思うように生きることができない一人の若い女性として描かれている。絶望の中で彼女が望むのは死。しかし、キリスト教では自死は禁忌であるため、幽霊となって劇場にいるグレイに自分を殺すことを頼み込む。
対するグレイは、芝居好きの幽霊で、悲劇を見たいがためにこれを引き受けるが…。
試し読みでは分からないと思うのですが、このグレイが魅力的なんです。
後から明かされる彼の人生は、裏切りに始まり裏切りに終わり、人間不信にならざるを得ない存在。そんな彼が、唯一見た美しいものが芝居、というところで、日頃辛いことがあっても、舞台を見ている間は現実を忘れて人間の本質の美しさに心を動かされて生きてきたので感情移入して涙。
彼の生きざまを聞いてフローが、誰も独りで逝かせないと決意し、人間不信だったグレイがフローといるうちに、人間の中に美しさを見出していき、共にかけがえなない相手になっていく過程がさ…死にたがりの人間と、とっくに死んじゃって生きがいも何もなかった幽霊とが、お互いのために、生きがいを見つける姿、守るべきもののためにバトルする姿に、これまでのバトル・アクションに対する概念が変わったのです。
しかも、フローの偉業や、周囲にいる人物は史実に基づいているのが凄い。
グレイがフローが力強く成長する理由になっているという展開もお見事。
そして恋愛要素だけではなく、若い女性に対する家族や軍隊という男社会に絶望させられそうになる姿や戦争下での人間心理という現代に通じる問題も描かれていて170年前の出来事なのに古臭くない。結婚の祝い(サムシングフォー)のマザーグースの歌の伏線回収に大泣き。プロが探す作品に外れなしと実感したスタオベ作品史実と伝説の見事な融合、素晴らしき哉
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