評判に違わぬ面白さ。シーモア(島)でいろいろな人が勧めていたことから安心して読み始めた。やはりいい。
自分は何者か。なぜそこにいることになったのかの問いよりも優先して、ある種の自分探しが進められ、段々思春期の放浪以上の秘密が解き明かされて
いく、というストーリー。異世界に飛ばされる話が流行しているが、宇宙に集団で、という形。十五少年漂流記からの着想だとの説明が巻末にある。子供の頃読み返した本なので成る程、という感じだ。ただの宇宙置き換え版ではなく、科学技術や人間の争い事へをもスケールを拡げている点が、本作の漂流物としての個性といえるし、ある程度はこうした未来物の持つメッセージ性は似てくるなぁ、とも感じた。極限の状況下、呉越同舟もあり、ぶつかり合いを乗り越え、単なる運命共同体に終わらず、強烈な仲間意識の醸成、戦友にも似た感覚で日を追って育っていく連帯。頭と身体と前向きな精神で、逞しくサバイバル。当初ギクシャクしていたのが次第に打ち解けていく過程は、ある意味常道であるが、読み物としてその普遍性に、特殊な秘密がまぶされ興味を繋ぐところが、上手い、と思う。
少女・女性向け漫画を主に読む私にも受け入れられる絵で読み易いが、女の子達のバストが男子漫画あるあるの強調ムッチリボディであるのが唯一、私的にはイヤだった。
ラスト数回のところが、少しだけ臭い。謳い上げる様なカーテンコール調の言葉と総括的なカットが、なんとなく多過ぎと感じた。長い旅を終えたあかつきの感慨には共感するが、終わりのナレーションが少しくどいのは、いじり過ぎの印象も。ただ、各キャラの帰ってからの姿の描写は読み手の好奇心に向き合って応えており、最後まで楽しませたいサービス精神をとても感じた。
あとがきによれば「宇宙冒険SF」は漫画では人気無いジャンルだという。このような作品を読んだら人の認識は変わると思う。
各巻末の幾つかまとまって収録されている4コマも可笑しい。
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